
2026年、多くの企業でオンライン研修やeラーニング動画が一般化しました。場所や時間を問わずに学習できる環境が整った一方で、社内教育の現場では新たな壁に直面している担当者様が少なくありません。「一通り動画は揃えたけれど、本当に社員の身になっているのだろうか?」という不安の声が日々寄せられています。この記事では、現在の研修動画運用におけるリアルな課題を深掘りし、受講者を惹きつけるための新しいアプローチについて解説します。
目次
研修動画を運用する企業が抱える「5つの深刻な課題」
せっかく多大なリソースを割いて制作・導入した研修動画も、現場のニーズや受講者の心理と乖離してしまうと、期待した効果は得られません。現在、多くの企業から寄せられる課題を分析すると、共通する5つのボトルネックが見えてきます。

課題1:研修動画を最後まで見てもらえない
動画を流しっぱなしにするだけの一方通行な内容になっており、受講者が途中で飽きて離脱してしまったり、ただ聞き流しているだけで内容が頭に入っていなかったりするケースが多発しています。PCで動画を再生しながら別ウィンドウで通常業務をこなす「ながら見」の温床になっており、形式的な「再生完了」の数字だけが積み上がっているのが実態です。
課題2:新人研修のエンゲージメントが低い
新入社員や若手社員を対象とした研修において、「やらされている感」が強く、自発的な学習意図や企業への帰属意識(エンゲージメント)に繋がっていないというモチベーションの課題です。ただでさえデジタルネイティブ世代は倍速視聴やインタラクティブなコンテンツに慣れているため、単調な座学動画に対して強い退屈さを感じやすい傾向にあります。
課題3:パワポデザインが上手くできない
社内で教材の内製化を進めようとしても、見栄えの良い洗練されたスライドを作るスキルやノウハウが担当者に不足しており、どうしても素人感のある見栄えの悪い資料になってしまいます。文字が画面いっぱいに敷き詰められたスライドは、受講者に「読むストレス」を与え、動画としての魅力を著しく低下させます。
課題4:制作代行を頼む予算がない
クオリティや受講効果を高めるために、専門の動画制作会社やデザイン会社へ外注(制作代行)したいものの、そこまでの多額な予算は割けないため、社内でなんとかするしかないという費用の限界です。1本あたり数十万円、数十本となれば数百万円にのぼる見積もりを前に、断念せざるを得ないケースが後を絶ちません。
課題5:資料作成・運用における制作負担が大きすぎる
法改正や社内ルールの変更に伴い、頻繁に研修資料を修正・更新する必要がありますが、その都度動画を作り直したりスライドを再構成したりするリソース(時間・人手)が足りないという運用の壁です。修正のたびにナレーションの録音をやり直したり、動画編集ソフトを立ち上げて再出力したりする手間が、担当者の本来の業務を圧迫しています。
これらの課題を解決するために必要な要素は?
これら5つの課題に共通しているのは、これまでのeラーニングが知識の「一方通行(インプットのみ)」になってしまっている点です。実際に、eラーニング担当者を対象とした調査では、約8割の担当者が「形だけの受講」が全体の40%以上発生していると実感しており、その主な原因として「学習内容への関心の低さ」が最多の65.1%で挙げられています(※1)。多くの企業が、再生完了という数字の裏で同じ壁にぶつかっているのです。

脳科学・心理学から見る「ただ見るだけ」の限界
学習心理学や脳科学の観点からも、受動的に情報を聞き続けるだけでは、どれだけ短い動画であっても人間の集中力は長く維持しにくいとされています。
- 動画は「6分」を境にエンゲージメントが低下しやすい:
オンライン学習プラットフォームedXの動画視聴データ約690万セッションを分析した研究(※2)によると、受講者が動画を視聴する平均エンゲージメント時間は動画の長さに関わらず最大でも約6分間にとどまり、それを超えると視聴の集中度が急激に低下する傾向が示されています。10〜15分の動画であっても、後半は「ただ画面が流れているだけ」の状態になりやすいのです。 - 認知負荷の分散と動機付け:
人間の脳は、文字や映像を一方的に見せられ続けると「情報過多(ワーキングメモリのパンク)」を起こしやすくなります。ここにゲームのような「次が気になる仕掛け」や「自ら選択して参加している感覚(自律性の欲求)」を満たす要素を挟むことで、脳が刺激され、学習そのものを「楽しい」「クリアしたい」と感じるポジティブな動機付け(自己決定理論)が働きます。

「作って終わり」の形骸化した動画研修から脱却し、受講者が自発的にモチベーションを維持して最後までやり切るには、ゲームのように「次が気になる仕掛け」や「自ら選択して参加している感覚(動機付け)」が不可欠です。動画をただ「視聴する」だけの存在から、受講者が「自らアクションを起こして体験する」存在へとシフトさせることが、2026年の人材育成における最大のカギとなります。
まとめ:課題解決のキーワードは「ゲーミフィケーション」
「予算はないけれど、制作負担を大幅に減らしつつ、受講者が最後まで夢中で見てもらえる洗練された研修動画を作りたい」――この一見わがままにも思えるすべての課題をクリアするための有効なアプローチが、いま教育業界で注目されている「ゲーミフィケーション」です。
ゲームの仕組み(ストーリー、自発的な選択肢、クイズ、即時フィードバック)を研修資料のなかに違和感なく取り入れることで、受講者は受け身の「視聴」から、自ら進める「体験」へと劇的に変化します。これにより、受講完了率はもちろん、実務への理解度も飛躍的に向上させることが可能です。
次回は、ゲーミフィケーションがもたらす驚きの効果と、手元のパワポを使いPIP-Makerで簡単にゲーム型研修を具現化する方法を徹底解説。さらに、デザインや分岐ルートを「一から作る負担」をゼロにする革新的な「新テンプレート」についてもご紹介します!
参考資料
- AirCourse:ゲーミフィケーションとは?企業研修への導入の際のポイントとメリット、注意点について解説
- 株式会社ソフィア:ゲーミフィケーションとは?仕事や研修を楽しくする仕組みと企業事例を徹底解説【2026年版】
- Cloud Campus:ゲーミフィケーション研修のメリットと3つの実例
- ※1 株式会社イー・コミュニケーションズ「eラーニング担当者の本音と課題に関する調査」(2025年)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000038.000026939.html
- ※2 Guo, P. J., Kim, J., & Rubin, R. (2014). How Video Production Affects Student Engagement: An Empirical Study of MOOC Videos. Proceedings of the First ACM Conference on Learning @ Scale (L@S ’14), 41–50. https://up.csail.mit.edu/other-pubs/las2014-pguo-engagement.pdf