
2026年、新入社員研修の現場でもeラーニングや研修動画の活用が急速に広がっています。場所や時間を選ばず、全員に均質な内容を届けられるオンライン研修は、特に教える項目が多い新人育成と相性の良い手法です。一方で、「動画は用意したものの、新入社員が集中して見てくれない」「一方的に流すだけで、身についている実感がない」という声も増えています。本記事では、新入社員研修で研修動画を活用する際の基本ポイントと、受講者を飽きさせないための新しいアプローチを解説します。
新入社員研修でeラーニング・動画活用が広がる背景
新入社員研修の実施形式は、対面の集合研修だけでなく、オンライン研修やeラーニングを組み合わせる形へと変化しています。ある人材育成企業が2025年に実施した調査では、新入社員研修の実施形式として「eラーニング」を挙げた企業が20.3%となり、2023年の調査から7.2ポイント増加したと報告されています(※1)。知識のインプットは動画で効率化し、対面ではグループワークやロールプレイに時間を割く、といった使い分けが一般的になりつつあります。

eラーニングが新入社員研修に選ばれる理由は、主に次の点にあります。
- 場所・時間を問わず、均質な研修を届けられる:インターネット環境があれば、本社・地方拠点・在宅勤務者など所在地に関係なく、同じ品質の内容を届けられます。講師によるばらつきも生じません。
- 受講者が自分のペースで反復学習できる:わからなかった箇所を何度でも見直せるため、理解が定着するまで繰り返せます。習熟度に差がある新入社員に向いています。
- 進捗・理解度を数値で把握できる:LMS(学習管理システム)を使えば、誰がどこで詰まっているか、どの単元の正答率が低いかを可視化でき、フォローの手が打ちやすくなります。
- 研修コストを規模に応じて抑えられる:一度作成した教材を繰り返し使えるため、受講者が増えても追加コストを抑えやすい構造です。
知識のインプットを効率化し、対面の時間を実習や対話に集中させられる点が、教える項目の多い新入社員研修と噛み合っています。
「動画を見せるだけ」では新人研修が機能しない理由
ただし、動画やeラーニングを導入すれば研修が成功するわけではありません。むしろ「作って配信して終わり」になってしまうと、次のような壁に突き当たります。
一方通行の動画は集中力が続かない
受講者が一方的に講師の話を聞き続けるだけの形式は、どうしても集中力が低下しやすいという弱点があります。これは座学形式の限界としてよく指摘される点で、ほかの手法と組み合わせる工夫が欠かせません。単に講義を録画しただけの動画は、この座学の弱点をそのままオンラインに持ち込んでしまいます。
新卒研修は期間が長く、中だるみしやすい
新卒採用の新入社員研修は、ビジネスマナーや社会人としての基礎から教える必要があるため、一般的に3か月〜半年程度の期間を設けます。長期にわたる研修では、単調なコンテンツが続くと受講者のモチベーションが徐々に低下し、いわゆる「中だるみ」が起こりがちです。
モチベーション維持の工夫不足は「失敗要因」
新入社員研修がうまくいかない典型的な要因として、研修頻度の不適切さ、受講者の習熟度の見誤りと並んで「モチベーション維持のための工夫が足りない」点が挙げられます。さらに、人事担当者が新入社員研修で感じている課題を尋ねた調査では、「新入社員の早期離職が多い」が3番目に多い28.8%という結果も出ています(※1)。研修そのものへのエンゲージメントの低さは、早期離職とも無関係ではありません。
「見せて終わり(受けっぱなし)」では定着しない
eラーニングの運用でとりわけ多い失敗が、動画を配信して視聴させただけで終わってしまう「受けっぱなし」の状態です。知識は活用することで深く定着するため、視聴するだけの受動的な学習では、必要な場面で知識を引き出せず、時間をかけて動画を見た意味が薄れてしまいます。また、視聴のペースを新入社員本人に完全に任せると、自己管理が十分でない時期だけに、順調に進む人とそうでない人の差が開きがちです。
eラーニングは「知る・わかる」まで ― 定着には組み合わせと工夫が要る
ここで押さえておきたいのが、eラーニングと集合研修・OJTの役割分担です。eラーニングが得意とするのは「知識のインプット(知る・わかる)」の段階で、実習やロールプレイ、チームでの対話、人脈形成といった「できる」の段階は、集合研修やOJTが担います。この両者を組み合わせる設計は「ブレンディッドラーニング」と呼ばれ、新入社員研修では特に有効とされています。

つまり、成果を出す新入社員研修に必要なのは2つ。ひとつは、動画やeラーニングを集合研修・OJTと組み合わせ、視聴後にアウトプットとフィードバックの機会を用意すること。もうひとつが、その入口となる研修動画そのものを「最後まで見てもらえる・飽きさせない」ものに作り込むことです。ここからは、後者の「動画の作り方」に焦点を当てて解説します。
実際の研修動画の例(PIP-Makerで作成)
「飽きさせない研修動画」とは、具体的にどのようなものでしょうか。下の動画は、アバターとナレーションを使ってPIP-Makerで作成した研修動画の一例です。パワーポイントの資料をベースに、アバターが語りかける形で解説を進めるため、講師が話し続けるだけの動画に比べて視線が集まりやすく、内容も頭に入りやすくなります。まずはイメージとしてご覧ください。
PIP-Makerには、こうした動画を「見せるだけ」で終わらせないための機能も備わっています。
- クイズ機能:動画の途中に選択式のクイズを差し込み、受講者に答えを選ばせながら進められます。ただ視聴するだけの受け身の状態から、自分で考えて選ぶ「参加型」の学習に変わるため、集中力と理解の定着を高められます。
- ログ機能:誰がどこまで動画を視聴したか、クイズにどの程度正答できたかを記録・確認できます。「受けっぱなし」を防ぎ、理解が浅い受講者やつまずいている単元を数値で把握できるため、その後のフォローや集合研修の設計に活かせます。
このように、動画の作り込みだけでなく「参加させる仕掛け」と「学習状況の可視化」まで一体で用意できる点が、研修動画を成果につなげるうえでの強みになります。
飽きさせない研修動画にする基本ポイント
では、新入社員に最後まで見てもらい、内容を定着させるには何を意識すればよいのでしょうか。動画教材のトレンドや制作の観点から、基本となるポイントを整理します。
- 1本を短くする(マイクロラーニング):情報過多の時代、長い動画は敬遠されます。近年は5分前後の短い「マイクロラーニング」が主流になりつつあり、要点を絞った短尺の積み重ねが好まれます。
- 結論から先に伝える:前置きの長い構成より、先に結論・要点を示す構成のほうが、忙しい受講者の集中を保ちやすくなります。
- スマートフォンで受講できるようにする:スキマ時間の学習に最も使われるのはスマホです。秘匿性の高い内容でなければ、個人のスマホで受講できるようにするほうが、確実に受講が進みます。
- テロップや画面の切り替えで単調さを避ける:話し手が映り続けるだけの映像は飽きられがちです。テロップで要点を強調したり、複数のアングルを切り替えたりする編集は、集中力の維持に効果があります。
- 小さな成功体験で自己効力感を高める:「自分にはできる」という自己効力感が高まると、自発的な学習につながります。研修の中に小さな達成の機会を用意することが有効です。
さらに効果を高める最新トレンド「ゲーミフィケーション」
基本ポイントを押さえたうえで、受講完了率と定着率をもう一段引き上げる手法として注目されているのが「ゲーミフィケーション」です。ゲーミフィケーションとは、ポイントやバッジ、クリアすべき課題(クエスト)、ランキング(リーダーボード)といったゲーム設計の要素を、ゲーム以外の場面に応用する考え方を指します。
特に新入社員研修では、「やらされている」という受け身の姿勢を、「自分で選んで参加している」という能動的な体験へと変えられる点が大きな意味を持ちます。動画やSNSを倍速・インタラクティブに使いこなすデジタルネイティブ世代にとって、ただ流れるだけの動画は退屈に映りやすいもの。クイズや選択肢、即時フィードバックといった仕掛けを研修動画に組み込むことで、「次が気になる」感覚を生み、最後までやり切る動機づけを引き出せます。
専門知識がなくても、使い慣れたパワーポイントからゲーミフィケーションを取り入れた研修動画を作る方法については、下記の記事で詳しく解説しています。
まとめ
新入社員研修におけるeラーニング・動画活用は、もはや当たり前の選択肢になりました。しかし成果を分けるのは、動画を「用意したかどうか」ではなく、「最後まで見てもらい、定着させる設計になっているか」です。短く・スマホ対応・飽きさせない編集という基本を押さえたうえで、ゲーミフィケーションのような能動的な仕掛けを取り入れることが、2026年の新人育成における差別化のカギとなります。
参考資料
- 株式会社ライトワークス:新入社員研修とは?代表的な内容や手法、カリキュラムの作成方法を解説
- 株式会社ライトワークス:eラーニングは動画で作れる?研修動画・教材の作り方も紹介
- doda人事ジャーナル:新入社員研修とは?求められるスキルと内容、実施期間を解説
- AirCourse(人材育成サポーター):新人研修にeラーニングを活用|講座一覧や導入事例、注意点を解説
- グロービス学び放題:新入社員育成にeラーニングを使う4つのメリットとおすすめの活用術
- ※1 株式会社ライトワークス「新入社員研修と新入社員のホンネ調査レポート 2025」(2025年10月公表)に基づく。