
株式会社トマト銀行様は、岡山を拠点とする地域密着型の銀行です。個人向け金融サービス、事業者向け貸出・経営支援を中心に、さまざまな金融サービスを提供しています。
同社は、OJT(On-the-Job Training)と連動した人財育成の方法を模索する中で、すでに導入していたが、より効果的な使い道を探っていたPIP-Makerに着目。新入社員、若年層向けの研修「TOKKUN(特訓)」や「Hit Tuk(ヒットツック)」などにPIP-Makerを活用し、人財育成のDX化を推進されています。
本記事では、執行役員 人財戦略企画室長の人見健治様、人財戦略企画室 調査役の橋本恭子様、人財戦略企画室 兼 経営企画部業務変革推進室 室長代理の俣野義和様に、人財育成の刷新を通じてDXに取り組まれたプロジェクトの全貌と、PIP-Makerの活用方法について伺いました。

執行役員 人財戦略企画室長
人見健治様
はじめに、貴社のご紹介と担当されている業務についてお聞かせください。
(人見様)
トマト銀行は、岡山を拠点に全国5都府県61カ店(インターネット専用支店を含む)を展開する金融機関です。約9割の店舗が地元岡山にあり、地域密着型の金融機関として、個人向け金融サービスの提供と事業者向け貸出・経営支援などを実施しています。
当社では、2024年4月に策定した中期経営計画において、「人財に基づく経営変革」と抜本的な「業務変革」という2つの変革に着手しました。このうち、人財戦略を担う組織として、私が所属する「人財戦略企画室」が新設されました。
当室は、経営全般を見据えながら、中長期的な成長に資する人財戦略の策定を主導することをミッションとしています。主な業務は、「人財に基づいた組織の企画・立案・総括及び組織変革」「人財育成方針を立案し人財育成強化」の2点です。
設置後、まず取り組んだのが、次の3つの施策です。
① 人事制度改定に対応した人財育成方法の策定
2025年4月の人事制度改定により、総合職と一般職をコース統合したことにともなう、一般職の職務範囲拡大や、若手社員の早期育成への対応。
② 砂時計型の人員構成を踏まえた育成課題への対応
ベテラン層と若手層が多く、中間層が少ない砂時計型の人員構成を背景に、人員やコストを過度にかけず、若年層を早期に育成する仕組みづくり。
③ 営業店のOJTと連動した人財育成の推進
営業店でのOJTと人財育成施策を連動させ、育成スピードの向上を図る取り組み。
人財育成の取り組みを進める中で、PIP-Makerを活用しようと思ったのはなぜですか?
(人見様)
これらの施策を推し進めるためには、若手の人財育成と営業店のOJT支援を両立し、人財育成を底上げする手法を確立し、それを効果的に届けるツールが必要でした。そこで着目したのが、すでに他部署で導入していた動画制作ツールPIP-Makerでした。
試してみたところ、PowerPointが作成できれば誰でも簡単に動画を作ることができ、大きなハードルも無く教育コンテンツを拡充できると考えました。実際に、入社2カ月のパート社員でも1カ月で作成できるようになりました。
動画制作ツールに関しては、他社製品も試してみましたが、私たちが求めていた「研修用の動画制作」という意味ではオーバースペックであったり、操作が複雑すぎたりしたため、引き続きPIP-Makerを活用しています。
PIP-Makerで作成した動画コンテンツとはどのようなものですか?
(人見様)
まずは、営業店のOJT支援として、パソコンやスマートフォンで視聴できる1本5分程度のショート動画を作りました。業務に必要な情報をコンパクトにまとめたコンテンツで、「人をつくり 人につくす」という経営理念にかけて、「Hit Tuk(ヒットツック)」と名付けました。
「Hit Tuk」制作にあたっては、各部署に協力してもらいながらコンテンツを拡充しており、現時点で総時間約1,000分、200本を超える育成コンテンツをアーカイブしています。
コンテンツの内容は、「決算書読みこなし講座」のような基本的な内容から、実務に即した「融資の稟議書作成の基本」「融資事務オペレーション」「預金事務オペレーション」など多岐にわたります。
上司や先輩社員など、質問できる相手がいないときでも、今すぐ知りたい知識やオペレーションを簡単に学び直せるのが「Hit Tuk」のポイントです。

「Hit Tuk」動画(PIP-Makerで制作)より抜粋
「Hit Tuk」のほか、PIP-Makerを活用した取り組みがあれば教えてください。
(人見様)
新入社員の早期育成とエンゲージメント向上を目的に、「Hit Tuk」を活用したオンライン動画配信研修を行っています。トマト銀行のキャラクターである「トックン」と、短期間で効果的に学習してほしいという思いをかけて「TOKKUN(特訓)」と名付けました。
この研修は、毎週火曜日に約30分、5カ月間にわたって実施する長期研修です。プログラムには、「Hit Tuk」を流した後に担当部署の社員が講師となって補足する講義と、講師による30分の講義の2種類があります。また、月に1回は冒頭に役員に挨拶をしてもらうなど、経営層にもこの取り組みに参加してもらうよう工夫しています。
「Hit Tuk」、「TOKKUN」ともに、オンラインで場所や時間を問わずに学習できるのが特長で、「TOKKUN」は事前に番組表を配布するので、興味のあるものから受講できるというメリットがあります。
また、すべてのコンテンツをアーカイブ化しているので、わからないところは繰り返し視聴し学んでもらえる点も特長の一つです。
まだ始まって1年の取り組みですが、「TOKKUN」は人事制度の改定に合わせて推進している、本部と営業店を巻き込んだ研修プロジェクトとなりました。
動画制作や他部署との連携で工夫されたことや、進める上で難しかったことなどがあれば教えてください。
(人見様)
ゼロから人財育成の方法を構築するというチャレンジでしたので、何から何まで大変でした。特に、これまでになかったツール、コンテンツを導入するため、銀行ならではのセキュリティ面やリーガル面が大きなハードルになり、運用管理規程の策定からスタートしなければなりませんでした。
また、コンテンツの作成・運用においては、誰が何をチェックして、修正は誰が行うのかといったフローを整理し、全社に浸透させる必要があります。人財育成のコンテンツを作成する前段階で、フローの構築や関係者間の調整にも時間を要しました。

人財戦略企画室 兼 経営企画部業務変革推進室 室長代理
俣野義和様
(俣野様)
PIP-Makerで動画を作るために、各担当部署がPowerPointを作成する必要がありますが、その部署の業務内容や資料の作り手によって、どうしても粒度に差が出てしまいます。「Hit Tuk」は5分程度の動画なので、簡単に理解してもらえるよう、こちらで手直しをすることもありました。
また、全部署の業務知識やオペレーションをコンテンツにするので、中には我々がまったく経験がない領域の内容も出てきます。他部署の方に協力してもらいながら、誤りが無いように進めていますが、最初はキャッチアップが大変でした。
さらに、すべてのコンテンツを新入社員や若手層向けにしなければならないという難しさもありました。できるだけ利用する社員の目線に合わせて、「わからないことや知りたいことは何か?」を意識しながら、知識やオペレーションが落とし込みやすい内容にしていきました。
(人見様)
「TOKKUN」の立ち上げ段階では、講師を務める社員に大きな負担がかかってしまうという懸念がありました。それを解決するために、講師による30分の講義と、「Hit Tuk」を流した後に講師が補足する2つのプログラムを設定しました。
当初は、「Hit Tukと講師による補足のみだと内容を伝えきれないのでは?」といった不安もありましたが、経験や知識を交えた補足を行うことで、内容の濃いプログラムにできたと感じています。
また、5カ月間の研修に必要な内容と講師の事前準備にも力をかけました。「受講者にはどのような学びが必要なのか?」「なにが求められるのか?」を熟考の上プログラムを組み立てました。
配信当日に、講義に適した社員や役員が出られない…といったトラブルが発生しないように、日程調整は研修スタートの3カ月前から行いました。

人財戦略企画室 調査役
橋本恭子様
「TOKKUN」など、さまざまな取り組みを進める中で、どのような効果を感じていますか?
(橋本様)
私自身もかつては学ぶ側だったので、「自分が初心者のときにHit TukやTOKKUNがあれば…」と強く感じました。本当にいいコンテンツができたなと思います。
4月に入社した新入社員からも、「もっと早くこれがあったら良かったのに!」といった声を耳にしています。好きなタイミングで何度も繰り返し復習できる点が好評で、来年以降は、さらに効果が表れてくるのではないかと感じています。
また、育成を担当する社員の負担を軽減できたのも大きな効果です。OJTという育成方法を採用しているため、現場にはどうしても負担がかかってしまうのですが、これまでは教える側の十分なサポートができていませんでした。「Hit Tuk」で若手社員の自己解決を促すことで、育成を担当する社員の負担を軽減できたと感じています。
(人見様)
人事部はもちろん、審査部・営業統括部・事務システム部など多くの部署に関与してもらい、全社を巻き込んだ取り組みにできたのは大きな成果だと感じています。「Hit Tuk」 「TOKKUN」と、それを届けるPIP-Makerによって、DXによる新しい人財育成の形を全社に浸透させることができました。
また、これまでの集合研修は、コンテンツを準備しても一度限りになることがほとんどでしたが、動画であればアーカイブとして残すことができ、繰り返し利用できます。このように形として残すことができたのも大きなメリットですね。
取り組みを始めて約1年、最小限の人員とコストで大量のアーカイブを残すことができました。これは、誰でも簡単に操作を覚えられるPIP-Makerがあったからこそだと感じています。
まだ始まったばかりの取り組みですが、経営層をはじめ、他部署のみなさんの協力を仰ぎながら、PIP-Makerも活用し、今後もどんどん拡張させていきたいですね。

今回ご紹介いただいた取り組みをどのように拡張していくのでしょうか?貴社の人財育成の展望について教えてください。
(人見様)
2025年12月に、各社員のスキルをレーダーチャートで可視化できる、タレント・マネジメント・システムを導入しました。このタレント・マネジメント・システムに「Hit Tuk」を連動させたいと考えています。
スキルをレーダーチャートにすることで、自身に足りないスキルがすぐ「見える化」されます。そこに「○○の知識ならこちらのコンテンツ」といった形で「Hit Tuk」に誘導すれば、スキルを伸ばすのに必要な情報を誰でも簡単に吸収できます。
このようなシステム同士の連携によって、育成の穴を埋め、全社員の成長やスキルアップをサポートするのが今後の大きな目標です。当社は、「学ぶ・教える・考える の好循環サイクルの実現」を人財育成の基本方針に掲げており、その実現に向けて、動画コンテンツによる「学ぶ」、OJTや対話を通じた「教える」、自らの業務を振り返る「考える」を、日常業務の中で循環させる仕組みづくりを進めています。
また、既存の集合研修に「Hit Tuk」を活用し、内容を平準化するという取り組みも検討しています。集合研修は講師の個性が出やすい形式でもあるので、人によって内容に差異が生まれてしまうことも少なくありません。特に、ビジョンやコンセプトのような核心は、全社として見解を統一する必要があるので、ここで「Hit Tuk」が使えるのではないかと感じています。
当室がPIP-Makerを本格導入し、規程やフローを策定したことで、「顧客向けの住宅ローンの説明を動画化する」など、DXによる業務効率化の動きも全社で活性化しています。このような動きも積極的に後押ししていきたいですね。
最後に、同じような課題をお持ちの他社の皆さまに向けメッセージをお願いします。
(人見様)
我々のようにセキュリティ面やリーガル面の要件が厳しい業界では、「ツールを導入できない」「思うようにプロジェクトが進まない」といった悩みを抱えている方も多いと思います。
そうした中で、当社が人財育成のDX化を推進できたのは、「学ぶ・教える・考える の好循環サイクルの実現」という、人財育成の基本方針を定めていたからです。この方針を軸に、関係部署と丁寧に合意形成を重ねながら一歩ずつ進めてきたことで、制約の多い環境下でも「Hit Tuk」や「TOKKUN」を形にすることができました。
これらの経験を通じて、社内にDXを浸透させていくためには、ツールの導入を検討する前に、まず目的を定めることが大切だと私たち自身も感じています。その上で、その目的を実現するために、どのようなツールが適しているのかを考えていくことが重要だと思います。
もし今、進め方に悩んでいるのであれば、まずは自社として「何をしたいのか」「どのような課題を解決したいのか」を整理するところから始めてみてはいかがでしょうか。
<4COLORSスタッフ一同より>
この度はご多忙の中、取材にご協力いただき誠にありがとうございました。
動画を活用した人財育成に取り組まれてから短期間にもかかわらず、検証を重ねながら研修体系を着実に構築されている貴社の取り組みを伺い、DXを進める上で多くの示唆をいただきました。
その一端をPIP-Makerが支援できていることを、大変光栄に存じます。
本記事が、人財育成や自社のDX化に取り組まれる皆さまの参考となれば幸いです。
※本インタビューはPIP-Maker販売代理店のTOPPANエッジ株式会社と共同で作成されました。