
研修・HR・DX推進の現場では、テキストや静止画中心のコンテンツから、動画への切り替えが進んでいます。背景には、動画の方が理解度や記憶定着率が高いとされていることに加え、リモートワークやオンライン研修の定着により「対面での説明」を前提にできない場面が増えたことがあります。
動画制作の選択肢としては、大きく2つの方向性があります。
- PIP-Makerのように、既存の資料(PowerPoint)をアバター・音声ナレーション付き動画に変換するツール
- Sora、Veo、Runway、Klingなどの、テキストや画像から映像そのものを生成する「生成AI動画」ツール
どちらも「AIを使って動画を作る」という点は共通していますが、何を入力とするか、そして得意とする用途は大きく異なります。両者を同じ「AI動画ツール」として一括りに検討してしまうと、目的に合わないツールを選んでしまったり、比較検討そのものに時間がかかってしまったりすることもあります。本記事では、両者の特徴と制約を整理し、目的に応じた使い分けの考え方をまとめます。
生成AI動画とは
生成AI動画は、テキストプロンプトや画像を入力すると、AIが映像そのものをゼロから生成する技術です。2026年時点では、Google「Veo」、Runway「Gen-4.5」、Kuaishou「Kling」などが主要な選択肢となっており、4K解像度や音声同時生成、数十秒〜分単位の長尺生成に対応するモデルも登場しています。なお、先行していたOpenAI「Sora」はアプリ・Web版が終了し、APIも2026年9月に終了予定であるなど、この分野は主要プレイヤーの入れ替わりを含めて移り変わりが速いという特徴もあります。
生成AI動画が強みを発揮する場面
- SNS広告やブランディング用の、映像表現そのものが目的のコンテンツ
- 実写・アニメーション風の演出を短時間で試作したい場面
- 商品写真や風景写真に動きを加えるなど、素材を活かした表現
- 決まった「正解」のない、クリエイティブな映像表現
生成AI動画の制約
- プロンプトから映像を都度生成するため、社内の具体的な手順・数値・専門用語を正確に反映させにくい
- 同じ入力でも出力が毎回変わりやすく、ブランドやトーンの一貫性を保ちづらい
- 修正のたびに再生成が必要になり、資料の一部だけを差し替えるといった対応がしにくい
- モデルやサービスの入れ替わりが早く、制作フローを長期的に固定しづらい
これらの制約は、生成AI動画そのものの欠点というより、「映像表現を一から作り出す」という性質上、業務で求められる正確性・再現性との相性が良くない場面がある、という理解が近いかもしれません。実際、生成AI動画を提供する各社も、広告・エンタメ・SNSコンテンツ向けの訴求を前面に出していることが多く、研修や業務マニュアルのような「内容の正確さが第一」のコンテンツを主戦場として想定しているわけではない点も、ツール選定の際には意識しておきたいポイントです。
PIP-Makerとは
PIP-Makerは、既存のPowerPoint資料をアバターとナレーション付きの動画に変換するツールです。生成AI動画とは異なり、映像の内容そのものをAIが創作するのではなく、すでに社内で確定している資料の情報を、そのまま動画という形式に変換するという位置づけになります。
PIP-Makerが向いている場面
- 研修・オンボーディング動画など、内容の正確性が求められるコンテンツ
- 医療・専門分野など、用語や手順の再現性が重要な場面
- 法改正や制度変更など、資料の更新に合わせて動画も継続的に更新していきたいケース
- 複数の話者・アバターを使い分けながら、統一されたトーンで量産したいケース
- 動画制作の専門知識がない担当者でも、資料さえあれば動画化できるようにしたいケース
スライドの内容がそのまま動画のベースになるため、情報の正確性を保ちながら、資料更新の都度、スピーディーに動画へ反映できる点が特徴です。プロンプトの解釈に依存しないため、同じ資料からは常に同じ内容の動画が生成されるという再現性の高さも特徴のひとつです。
また、動画制作を外部の制作会社や専門部署に依頼する場合と比べて、資料を作成した担当者自身が動画化まで完結できるため、制作にかかるリードタイムを短縮しやすいという運用面のメリットもあります。特に、法改正や制度変更のたびに内容を更新する必要があるコンテンツでは、このスピード感が実務上の負担軽減につながります。
PIP-Makerならではの機能
生成AI動画との違いをより具体的に見ると、PIP-Makerには「正確な情報を、継続的に、管理された形で届ける」ための機能が備わっています。
AIアバター
50種類以上のアバター(実写・イラスト・動物・ロボットなど)が、PowerPointをアップロードするだけで自動的にナレーションを担当します。撮影やモデルの手配が不要で、写真1枚から自社の制服を着用したオリジナルアバターを作成することもできます。
多言語対応
65言語以上・450種類以上の音声に対応しており、同じ資料から多言語版の研修動画をそのまま展開できます。翻訳や吹き替えを別途手配する必要がないため、海外拠点や海外拠点向けの教育コンテンツを、国内と同じ品質・同じスピードで用意できる点が、生成AI動画にはない実務上の強みです。
ロールプレイ機能(3人ロールプレイ)
アバター2体による対話に、音声のみのナレーターを加えた「3人ロールプレイ」で、状況説明や補足解説を交えたやり取りを再現できます。ロールプレイング研修、FAQ対応、カスタマーサポート教育、営業トークの再現など、1人の説明だけでは伝わりにくい「対話」そのものを教材化できる点は、単発の映像を生成する生成AI動画にはない使い方です。
埋め込みビデオ
アバターによる説明動画の中に、実際に撮影したMP4映像などをそのまま挿入できます。機器の操作手順や手術手技の流れなど、言葉やアバターの説明だけでは伝えきれない「実際の動き」を、必要な部分だけ実写で補完できる点が特徴です。
多業界の埋め込みビデオサンプル動画
インタラクティブ機能
動画の途中にクイズやアンケートを組み込み、視聴者の回答に応じて次の展開を変えることができます。外部リンクや資料ダウンロードページへの誘導も可能で、視聴者がどこで離脱したか、どの内容への関心が高いかといった視聴データも取得できます。動画を作って終わりではなく、視聴後の行動や効果測定まで一体で運用できる点は、生成AI動画にはあまり見られない特徴です。
目次、クイズのサンプル動画
セキュリティ
Microsoft Azure基盤を採用し、脆弱性診断・プラットフォーム診断を実施しているほか、権限管理によって部署・役職ごとにアクセス範囲を制御できます。さらに、管理者側で誰がいつ何を閲覧・操作したかのログを確認できるため、社内での利用状況を可視化した上で内部統制や監査対応にも活かせます。銀行や自治体など、情報管理が厳しい組織でも利用されている実績があり、機密性の高い社内資料を扱う研修・マニュアル動画にも適した設計になっています。
こうした機能は、いずれも「資料に基づいて正確に伝える」「視聴後の効果まで把握する」「安全に運用する」という、業務利用ならではのニーズに応えるためのものであり、演出表現そのものを目的とする生成AI動画とは、機能面でも設計思想が異なることがわかります。
導入実績から見る効果
PIP-Makerは、2026年1月時点で導入社・校数850社、総動画作成数20万本を突破しました。業界別の活用実績としては、次のような例があります。
- 建築資材会社:研修・マニュアル・営業支援ツール動画を5,000本以上制作
- 保険会社:2,600本以上の動画を活用し、成約実績が導入前の1.8倍に
- 建設会社:新規入場者教育にかかる年間コストを16,000時間以上削減
- 銀行:動画1件あたりの作業時間を約8時間短縮
制作工数の面でも、撮影・録音・スタジオ確保を伴う通常の動画制作と比べ、シナリオ作成後の音声調整は数分〜十数分程度で完了するケースが多く、修正も元のPowerPointファイルを直すだけで済む点が、更新頻度の高いコンテンツとの相性の良さにつながっています。 業種別の具体的な活用方法や、導入企業様の声については、導入事例ページでも詳しくご紹介しています。あわせてご覧ください。
具体的な活用シーンで見る違い

同じ「動画で伝える」というテーマでも、目的によって適したツールは変わります。
例1:新人研修用のコンプライアンス動画
社内規定や手順を正確に伝える必要があるため、内容の解釈にブレが生じない形式が求められます。このようなケースでは、既存資料をそのまま動画化できるPIP-Makerのような仕組みが向いています。
例2:新サービスのSNS広告動画
情報の正確な再現より、視覚的なインパクトや世界観の表現が優先されるため、生成AI動画による演出重視の映像制作が向いています。
例3:医療機器の操作説明動画
手順や数値を誤りなく伝える必要がある一方、複数の対象者(医療従事者・患者など)向けにトーンを変えて量産したいというニーズもあります。この場合も、正確性と再現性を重視できるPIP-Makerのようなアプローチが適しています。
比較の視点
ここまで見てきた特徴を、目的別に選びやすいよう主要な観点で一覧にまとめました。どちらのツールにも得意・不得意があるため、コンテンツの性質に応じて参考にしてください。

| 観点 | PIP-Maker | 生成AI動画 |
|---|---|---|
| 入力するもの | 既存のPowerPoint資料 | テキストプロンプト・画像 |
| 情報の正確性・再現性 | 元資料の内容をそのまま反映 | プロンプト次第で誤差が生じやすい |
| 出力の一貫性 | 同じ形式・トーンで量産しやすい | 生成のたびに表現が変わりやすい |
| 修正のしやすさ | 資料を直せば動画も更新可能 | 部分修正には再生成が必要なことが多い |
| 制作に必要なスキル | 資料作成スキルがあれば対応可能 | プロンプト設計のノウハウが必要になりやすい |
| 得意な用途 | 研修、HR、DX、専門分野の説明動画 | 広告、SNS、演出重視のクリエイティブ |
| 向いていない用途 | 演出性の高い実写・アニメ表現 | 正確性が求められる業務コンテンツ |
制作フローの違い
動画ができあがるまでの流れを比較すると、両者の性質の違いがより明確になります。あわせて、コストや運用の負担のかかり方にも違いが出てきます。
生成AI動画の場合
- 実現したい映像のイメージをプロンプト(テキスト・画像)に落とし込む
- AIに生成させ、出力結果を確認する
- イメージと異なる場合は、プロンプトを調整して再生成する
- 必要に応じて複数カットを組み合わせ、編集する
映像の完成イメージを言語化する工程が入るため、狙った表現に近づけるまで試行錯誤が発生しやすく、担当者のプロンプト設計スキルにも仕上がりが左右されます。費用面も、月額サブスクリプションや生成本数に応じた従量課金のプランが中心で、狙った表現になるまで複数回生成し直すことも多いため、高品質・長尺な動画ほど想定よりコストがかさみやすい傾向があります。
PIP-Makerの場合
- 既存のPowerPoint資料を用意する(すでにある研修資料や説明資料をそのまま使える)
- アバター・音声・ナレーション文を設定する
- 動画に変換する
- 資料に変更があれば、該当スライドを直して再変換する
資料作成のスキルがあれば対応できるため、映像制作の専門知識がない担当者でも扱いやすく、資料の更新に合わせて動画を都度メンテナンスしていくフローに組み込みやすいという特徴があります。既存資料を動画化するという工程の性質上、1本あたりの制作にかかる工数も抑えやすく、研修コンテンツやマニュアルのように更新頻度が高く本数も多くなりやすいコンテンツを、継続的に作成・更新していく運用と相性の良い仕組みです。
よくある疑問
Q. 生成AI動画の技術が進化すれば、いずれ研修動画にも使えるようになるのでは?
映像のクオリティ自体は今後も向上していくと考えられますが、プロンプトから都度生成するという仕組み自体は変わらないため、「元資料と寸分違わぬ内容を再現する」という用途とは、性質として相性が異なる部分が残ると考えられます。
Q. 両方のツールを併用することはできますか?
可能です。例えばサムネイルやオープニング演出には生成AI動画を使い、本編の説明部分はPIP-Makerで作成するといった組み合わせ方が考えられます。
Q. 社内で動画制作を内製化したい場合、どちらから始めるべきですか?
まず正確性が求められる研修・マニュアル系のコンテンツから内製化したい場合は、既存資料を活かせるPIP-Makerのようなツールが着手しやすい選択肢になります。ブランディングや広告分野から着手したい場合は、生成AI動画の活用を検討する流れが自然です。目的によって最初の一歩を分けて考えることをおすすめします。
まとめ:対立ではなく使い分け
生成AI動画とPIP-Makerは、競合するツールというより、目的が異なるツールと捉えるのが実態に近いといえます。ブランディングや広告など「表現そのもの」が価値になるコンテンツには生成AI動画が向いており、研修・HR・DXのように「正確な情報を、継続的に、統一されたトーンで届ける」ことが求められるコンテンツにはPIP-Makerが向いています。
動画制作のツールを選ぶ際は、「何を表現したいか」だけでなく、「どれだけ正確性・再現性・更新のしやすさが求められるか」という視点も踏まえて検討することをおすすめします。目的に応じてツールを使い分けることで、限られたリソースの中でも、必要な動画コンテンツを継続的に制作・更新していく体制を作りやすくなります。
